人を愛するとは、技術である。
愛情というのは、放っておけば、自然に心の中に湧いてくるようなものではなく、
人の愛し方には技術がいる。
たとえば、初対面の人に会うときは、「私は、この人が好きなんだ」と心の中で
つぶやくようにしてから、会うとよい。
そうすると、本当に愛することができるからである。
また、愛情といのは、心の中でぼんやりと思っているだけではダメであり、
きちんとした行動で示さなければならない、という特徴がある。
そのため、「あなたを愛しています」ということを、言葉でなり、手紙やメールでなり、
きちんとした形で相手に伝えなければならい、そうしないと、自分の愛情は、
相手に伝わらないのである。
さらにいうと、愛情を伝えるのは、一回だけやれば十分かというと、そうではない。
できれば毎日、それを相手に伝えたほうがいい。
何度も、何度もくり返すからこそ、「本当に、この人は私を愛してくれているのだな」
という誠実性を感じさせるからである。
そういうことをしっかり認識しておき、なおかつ実践している人だけが、
人を愛することができるのである。
「愛情を持とう」というお題目をいくら唱えていても、人を愛する技術は身につかない。
また、技術というのは、練習しておかないと、どんどんヘタになってしまう。
スポーツ選手は、毎日、練習をして、技術が落ちないように努力している。
愛する技術も、できれば毎日の人付き合いの中で実現しないと、腕が落ちてしまう。
だから、実践が大切である。
人を愛するためには、相手のいいところ探しをしたり、相手の性格の悪いところには
目をつぶってあげたり、ウソでもホメてあげたり、いつでも笑顔を見せてあげたり、
という複合的な技術を身につけなければならない。
たしかに、人を愛する技術は高度な技術である。
しかし、この技術を身につけることは「人生において必須のスキル」だと思う。
ぜひ、面倒くさがらずに、日々の人間関係の中で、磨き磨いてはしい。
まさに仕事も同じ、良い会社をつくるには、
このことを経営に置き換えれば良い会社に作りが出来るのではないでしょうか。
『愛するということ』著:エーリッヒ・フロム より一部抜粋