「思い」には我々の人間性、人柄、人格を形成していくという面と、我々の境遇、
周囲の環境をつくり出していくという面の二つの側面があるわけですが、
さらに「思い」が持つ偉大な力を端的に示しているのが、現在の文明社会のなり立ちです。
今から約二百五十年前にイギリスで起こった産業革命を機に人類は近代化な文明社会を築いていきました。
それは、人類の「思い」から生まれたものです。
もともと人類は、木の実を拾い、魚を獲り、獣を捕まえる狩猟採集の生活を行い、
自然と共生していました。しかし、いまから1万年前に、人類は自分たちで生産手段を持ち、
穀物を栽培し、家畜を養って食べるという、農耕牧畜の時代と移って行きました。
狩猟採集の時代には自分達の意思で生きていくことはできませんでした。
それが農耕牧畜によって掟から離れ、自分達の意思でいけるようになったのです。
そして、およそ二百五十年前に産業革命が起こりました。人類は蒸気機関を手に入れ、
工業で多くの機械を使い、様々な製品を生産すようになりました。
それからというもの、次から次へと発明・発見を行い、科学技術が著しく進歩し、
今日の素晴らしい文明社会が作られて行きました。
悠久の歴史の中で、僅か二百五十年という短い時間に、人類は豊かな文明社会を築き上げたのです。
なぜ、これほどまでに科学技術が発達してきたのでしょうか。
それはとりもなおさず、人間が本来持っている「思い」というものがもとになっています。
人は誰でも、「こうしたい」「こうしたいものが可能ならば」もしこういうことが可能ならば」
という「思い」が心に浮かんできます。」
例えば、いままで歩いたり、走ったりしていたところを「もっと速く、便利に移動する方法はないのだろうか」
と思い、そこから「新しい乗り物が欲しい」という夢のような「思い」を抱くようになります」
そして、その夢のような「思い」が強い動機となって、人間は実際に新しいものをつくっていきます。
何度も失敗を繰り返しながら、新しい乗り物を作り出していくのです。
そのようにして、ある人は自転車というものを考案しました。
ある人は自動車を発明し、またある人は飛行機つくりました。
そういう具体的なものを発明しつくっていく際には、頭で考え、研究しなければなりませんが、
その発端となるのは、心の中にフッと湧いた「思いつき」です。
一般には、よく「そんな思いつきで、ものを言うな」と言われるように、「思いつき」こそが非常に大事なのです。
人の心に浮かんだ様々な「思いつき」が発明・発見の原動力となり、今日の科学技術を生み出したのです。
このように「思う」ということは物事の出発点となります。
人間の行動は、まず心に「思う」ことから始まるわけです。
この「思う」ということがなければ、人間は何も行動を起こすことができません。
多くの人は「思う」ことを簡単なことだと捉え、軽んじていますが、「思う」ことほど大事なものは他にありません。
